入門・ブローデル



入門・ブローデル
入門・ブローデル

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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「ブローデル史学」の意義と可能性


 当書は、1991年10月、メキシコシティで開催された「第1回国際ブローデル学会」におけるI.ウォーラーステインや連れ合いのポール・ブローデルなどの各種レポートを取りまとめたものであり、「ブローデル史学」を理解する上で良き“導きの糸”となるだろう。

 さて、本書に掲載されている論稿はそれぞれに妙趣があるのだが、私は、特にカルロス A.A.ロハスやボリーバル・エチェベリーアそしてウォーラーステインの論考に興味をもった。例えば、ロハスの「長期持続(la longue dur'ee)」に関する解説では、歴史制度分析等における「経路依存性(path dependence) 」や「慣性(inertia)」などとの比較考察で、面白い論理の組み立てができるのではないか、とつい想像を掻き立ててしまう。

 また、ブローデルは資本主義という歴史的概念を<物質生活><市場(交換)経済>及び<資本主義経済>という三層構造で把捉し、最上位に資本主義経済を措定している。そして、ウォーラーステインも示唆していることだが、この資本主義経済を否定する潜勢力は、実は下位の二層の中にあると思われる。さらに、ブローデルは明示していないけれども、彼の「中心化」等の理論を勘案すると、最上層の経済を牛耳っているのは“ディアスポラの民”ではないだろうか…。

 最後に、ブローデルの浩瀚なる書物は「資本主義」を解剖するための“入口”であって、決して“出口”ではない。本書の中でウォーラーステインが語るように「自分たちの省察の基礎として彼(ブローデル)の著作を使うことをためらってはならない」し、R.ボワイエ等のレギュラシオン学派もブローデルを含むアナール派歴史学の意義を強調している。経済学は単純な数理模型の世界ではない。それは、人間の歴史や制度などが揺曳している極めて人文科学的な学問なのだ。
人間・ブローデル

 「入門」と書かれていたので買ってみましたが、「全体史」とそのキーコンセプト―長期持続―に関する詳細な解説、マルクスとの概念の類似性、知的営みの全体像、生い立ちと幅広く取り上げられており、ブローデルの入門書として最適です。

 私のお気に入りは第5章で、そこには捕虜生活を送るブローデルが『地中海』の草稿を仕上げる際に夫人とやり取りした手紙についての記述があります。一人の人間としてのブローデルの魅力が詰まっているいい箇所だと思います。



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