日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))



日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))
日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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読み易く多層的?稀有な歴史解説書

日露戦争前後の日本と諸外国の状況を、戦争を核として生じる様々なイデオロギーの浮き沈みを中心に(事象が次の事象を生む“連鎖”の指摘を別とすれば)淡々と語った叙事文に過ぎないのだが。「何とか史観」などという難しい考え抜きで、(中学・高校生から大人向け)読み物として実に面白い。“面白い”がシリアスな内容に不似合いならば興味深いと言おうか。

 先ず、綿密で繊細な調査によって得られた複数のジャンルにわたるエピソードの数々、特に全編に散らされた民間レベルの話題によって(私)はその場に居合わせた気にさせられる。また、それらの事象が仲介となって、一見無縁な事柄どうしが(連鎖?を伴った)関連性を持ち始める面白さ。その最たるものは1901年に作られた或る高校寮歌の血を沸かすような旋律が、タイトル、目的や歌詞を度々変えながら何十年も(恐らく現在まで)歌い継がれていくというエピソード(91頁、182頁)だろう。

 本書は、内容を咀嚼し(時に内省を促す)という通常の読書パターンで納まらず、読者を継続的な咀嚼段階へと誘惑する点で、通常の歴史解説書にない動的な作用をもたらし、多層的な味わいを持つ稀有な著作と見た。その咀嚼段階とは、本書に印された“連鎖”の語句をヒントに、本書中の諸所に隠れた“連鎖”の事例を読者自身が見つけ出し、連鎖系統マップを作成しつつ比較検討して味わう作業のことです。その実践の後には、本書から離れて(私)の周辺に“連鎖的”事例を見つけ出す習慣、そして戦争や平和の意味を自分の言葉で考える力が身に付きそうだ。私たち日本人の心的ルーツを解き明すための旅で?手掛かりとすべき最も重要なテキストと位置付けたい。

 最終章で突如として示される話の転換、内容の変節は、時として、変化の少ない平和よりも血のたぎりを呼ぶ戦争に充実を覚えかねない我々の特質に対する著者の不甲斐なさの表れ又は焦りと受け取りました。
面白い!

サブタイトルからも分かるように、本書は、「連鎖視点」から、日露戦争を巡る世界を描写している。すなわち、世界史をナショナルヒストリーの総体とする描き方を脱し、日露戦争を軸にした一つのグローバルヒストリーとして描かれている。「黄禍論」を巡る広告戦争が、世界に波及して言った点、戦後日本が「知の結節点」となって世界の注目を集めた点、ロシア革命に端を発する社会主義思想の波及など、世界史の中での日露戦争の位置づけが描かれ、非常に興味深い。

本書においてもう一点、評価しうる点を挙げるとすれば、日清・日露とその後歴史の間に「断絶」よりも「連続」を見ている点にある。今の多くの日本人の認識は、「司馬史観」という言葉があるように、昭和前期は「逸脱」の時期であって、日露戦争までの日本の歩みは素晴らしかった、というようなものであろう。しかし、本書は、日清・日露戦争と平行して進んだ朝鮮の植民地化こそ、両戦争の主目的であったとみる。

植民地主義の下に苦しんだアジアにとって、躍進する日本は希望の的であった。そのような希望が、いかにして裏切られていったか。それでいて最後には再び「八紘一宇」「大東亜共栄圏」「アジアは一つ」といったアジア主義を掲げていくことになった。この過程には、「近代」という時代の孕むアポリアがある。本書は、そのような日本の、アジアの、そして世界の「近代」という時代を考える上で、非常に示唆に富む良書だと思う。

連鎖的歴史記述そして非戦の願い

 日露戦争を中心に日本と世界との関係を物語った歴史書です。
 日露戦争の勝利で中国、韓国の他にトルコ、ブルガリア、ポーランドなどが日本に注目したこと、
 韓国併合の際、統治の形態をイギリス保護領下のエジプトに求めたこと、
 そして日露戦争後の内務省主導の言論風圧が大正デモクラシーにつながったことなど
 歴史的事件が個別に存在するのでなく、世界的な連続を持った歴史を叙述しています。
 日本の近代を日本一国の視点でのみとらえる昨今の落第的な歴史記述より
 はるかに刺激的だと断言できます。

 さて、なによりも本書の目玉は思想の連鎖です。
 社会主義、トルストイ思想、非戦論などの思想が世界的に広まり
 多くの人々の植民地主義に対する抵抗の手段となった叙述が面白かったです。
 山室氏はその中でも殺伐とした現在をみて平和の重要性を主張しています。
 人類の世界的な不戦の意識は18世紀末に芽生え、19世紀の軍縮条約や不戦条約、
 そして日本国憲法第9条につながったことを指摘し、
 更に「言辞としては陳腐、実行としては新鮮なる非戦」
 という中江兆民の言葉を引用し非戦の重要さを説いています。
 戦争を知らない世代にとって考えなければならないことが盛りだくさんでした。
戦争に至る背景を詳しく伝えている

日清、日露の戦争の経過には殆どページを割かず、戦争にいたるまで、あるいは戦争後の民衆や政治、外交、軍部の事情などを述べている。これまでにはない視点で、明治の戦争を伝えてくれている。
非戦論が随所にみられるのが気になったが、この時代を知るにはよい本だと思います。
やや左派視点からの日露戦争

 日露戦争を起点に前後一世紀の日本近代史の因果関係を追う。 
 やや岩波的・左派的・進歩的な史観であり、つまりいわゆる日本とアジアの不幸な歴史と真摯に向き合うべきだという立場で、日露戦争を肯定的に評価する保守的な向きとは一線を画している。しかし日露戦争の勝利にアジアの人々が期待したという記述などは充実しておりバランスはとれている。
 いずれにしても近代日本史の分水嶺を日露戦争に求めている点は重要で、100周年の今年としては今日の目からも考えるべき点は多い。



岩波書店
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日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争―もうひとつの「物語」 (新潮新書)

乳房論―乳房をめぐる欲望の社会史 (ちくま学芸文庫)

入門・ブローデル

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忍びの者〈2〉五右衛門釜煎り (岩波現代文庫)




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